ピアニスト小成亜紀子のコンサート・シリーズ“メモリー”は、すでに更なる歴史を歩みはじめているが、この第12回を迎え、会場も松尾ホールに移して、さらに意欲を新たにしているにちがいない。そしてそれは、当然レパートリーにも明らかと言えよう。 冒頭は、ベートーヴェン(1770〜1827)後期、最後の“3大ソナタ”の第1曲となるホ長調作品109である。1820年に作曲されたこのソナタの草稿には、作品101、作品106と同じように“ハンマークラヴィーア”のためのと記されていたが、初版では“ピアノフォルテ”と書きかえられた。彼の後期のソナタの中でも出色の美しさをもつもので、自由さも備えた2つのソナタ形式による楽章と、歌謡的な主題と6つの変奏による魅惑的な終曲とからなっている。 ドビュッシー(1862〜1918)の初期のピアノ曲の中でも最も広く親しまれている〈ベルガマスク組曲〉は、1890年に着手されながら、出版されたのは1905年のことである。この間の推敲の過程については明らかではない。北イタリアのベルガモ地方の印象が題名となっているが、むしろ、彼の15年の歩みを思わせるようなところもある。“月の光”が最も知られていることは言うまでもない。 ロシア国民楽派「5人組」のひとり、ムソルグスキー(1839〜81)が、1874年に作曲した組曲風のピアノ曲〈展覧会の絵〉は、早くからこの楽器の演奏に才能をみせていた作曲者の特性と、アカデミックな作曲技法の研鑽を経ることのなかった独創的な書法とによって、この時期の最もすぐれた個性的ピアノ曲のひとつとなった。作曲の動機は、数年来の親友であった革新的な建築家ヴィクトル・ハルトマン(1842〜73)の夭折を悼み、翌年1月に開かれた400点余の遺作展から素材を得たもの。一部カタログに見あたらないが、プロムナードも挟んだ10曲に、きわめて強固で直截な表現もみせている。
小成亜紀子
今年は、皆様のあたたかなご支援が演奏の際の大きなパワーとなりますことを、改めて強く感じた1年でした。 本当にありがとうございました。
来たる新しい年が、歓びに満ちた日々でありますように。 今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
10月30日のコンサート“メモリー”。 素敵な瞬間の連続である音の世界をお楽しみいただけますよう、励んでおります。 ご来場を心よりお待ちいたしております。